通勤に使えるバイクこそ最強に楽しめるバイク
もともと私はバイク通勤に興味がありませんでした。バイクは万全な装備と準備の上で、休日にまとまった時間をとって楽しむものと考えていたからです。しかしその考えが最近変わりました。
世の中は通勤に使えないバイクばかり
「あなたの愛車、通勤に使えますか?」と尋ねたら、多くの方が「いや、通勤に使うバイクじゃないし…」と言葉を濁すでしょう。「通勤で乗っても面白くないし、もったいない」と感じる方がほとんどのはずです。
バイクと言っても50ccから1000cc超えまで様々なバイクがあります。250ccを超えるバイクを毎日の通勤に使うのは現実的でないと感じる人がほとんどでしょう。
では逆に考えましょう。「通勤に使えないバイクのなにが楽しい? 通勤という限られた状況でも楽しめるバイクこそ、本当に楽しいバイクである」と。
休日に準備に時間をかけてようやく乗れるバイク、それはバイクの楽しみ方の中で非常に限定されたものだと考えます。仕事が早く終わった日に多少疲れがあっても気軽に乗れるバイクこそ、真にフレンドリーで楽しめるバイクです。
通勤でも楽しめるバイクってどんなヤツ?
まず軽くて取り回しが良く、足つきも良いこと。仕事着でサッと車庫から出し入れするので、重かったりハンドルが低かったりするとストレスです。また信号待ちが億劫にならないよう足つきも重要です。この時点で400cc以上のバイクはほぼ全滅します。
通勤に使うなら積載性が重要です。ビッグスクーターか、ホームセンターの巨大な箱を搭載しないと非常に不便です。
できれば風防、カウルがあると寒風や雨対策となり快適です。スクーターならカウルで隠れますし、カブなどのビジネスバイクならレッグシールドがあります。
そんなバイク、通勤で乗って楽しいの?
楽しいです! 現在バーディー90で毎日通勤していますが、楽しいですし実はめちゃくちゃ練習になります! 朝と夕方の通勤はご褒美、生き甲斐です!
小排気量車は乗れば大抵の方が楽しめるかと思います。そしてスポーツ走行が好きで練習熱心なライダーにもとてもオススメです。
毎日バイクに乗ることが上達への近道
社会人だとバイクは乗れても週1回で、通常は月に2〜3回です。するとやはり乗り方を少し忘れます。少し走れば思い出すことが多いですが、その思い出している間は無駄になります。サーキットなら貴重な走行時間を費やしてしまいます。ブレーキの掛け方や体重移動のタイミングなど、細かい部分で挙動が全く変わってしまうのがバイクです。
逆にバイクで毎日通勤すると、毎日違うことを試せるのです。「ブレーキを限界まで我慢してみよう」「もう少し手前から掛けてみよう」「斜めに寝かせながらブレーキしてみよう」「ブレーキリリースと同時に下に体重移動してみよう」「下に体重移動したら内側に腰をひねってみよう」など。
乗り方を忘れるどころか、毎日新たな挑戦を続けて進化していけるのがバイク通勤の最大の魅力です。「いつもの道、もっと高い車速で曲がるにはどうすればいいのか」と毎日挑戦できます。
「スポーツ用じゃない小排気量の街乗りバイクで練習してもしょうがない」と思う人もいるかもしれません。しかし私はそうは感じません。スクーターだろうと、12インチのミニバイクだろうと、14インチのビジネスバイクだろうと、曲げるテクニックはほぼ共通です。私は山道ではカタナ、サーキットではGSX-R125、通勤ではバーディー90ですが、全て同じ操作で気持ちよく曲がってくれます。
ではビッグバイクで通勤しても練習になるのか
あまりならないと思います。なぜなら街中では完全にオーバースペックだからです。街中で出せる程度の速度では荷重が足りず、400cc以上のバイクでは半端な走りになります。逆に125cc以下なら街中に合わせた設計なので、バイクの性能をバランスよく使えて練習になります。
4輪の車速+αくらい出れば十分なので、50ccは厳しいですが125ccもあれば街中での練習には十分すぎます。バーディー90はパワー不足という評価が多いですが、それでも日中はフルスロットルにしていない時間のほうが多いですし、コーナリングの練習にはバッチリです。
具体的に何を練習すればスキルアップできるのか
まず乗車姿勢。スクーターだろうとビジネスバイクだろうと、SSに乗ってるイメージで前傾して背中を丸め、メーターにヘルメットが当たるほど重心を下げて乗ります。日常生活とは無縁のこの姿勢を毎日通勤で行うことで、バランス感覚や体の柔軟に繋がり、またインナーマッスルも無理なく鍛えられます。姿勢に慣れることで無駄な力を抜けるようにもなります。私はこれでサーキットで疲れにくくなりました。
そしてブレーキング。プアなブレーキにサスですから、ブレーキング時の姿勢や重心位置、握り方を丁寧に行わなくてはなりません。伸び側減衰などとも基本的に無縁ですから、ブレーキを離せばすぐにフォークが伸びてしまう。なのでブレーキと同時に瞬時に必要なだけバンクさせ、セルフステアを効かすことで遠心力を掛けてフォークを伸ばさないことが必要です。
その上で車速を落とさず曲がる。小排気量車は軽量なのでコーナリング速度が非常に高いです。カブのようなバイクでも適正な操作を行えば見違える速度で曲げることができます。最も重要なことは寝かし込みです。強力なブレーキでバイクが立とうとする中で、内側のハンドルをほんの少し押しながら肘を地面に突き刺すように落とし、上体を大きく下げて重心を下げることです。強力なブレーキ中でも車体をぐいっと寝かせることができるはずです。
そうして上体を落として重心を下げられたら、そこからさらに腰・脇腹から内側にひねり、同時にアクセルを開け足すとグイグイ曲がります。ビジネスバイクだろうが、ものすごく曲がります。この流れができれば、曲がりたいところで瞬時にバンクさせて、バイクをイン側へグイグイ引き込むように曲がることができるようになります。これを街中で練習して、本命のバイクでサーキットで実践すると練習効率が上がるのです。
どういったバイクが通勤練習に向いているのか
私の考えでは17インチか14インチの車種がいいと思います。10・12インチだと17インチとの差異が出てくる可能性があるからです。
あとは通勤路に直線が多いのかにもよりますが、125ccより大きいモデルはパワーがありすぎるため敬遠したほうがいいです。
それとボトムリンクサス(ブレーキでフロントフォークが伸びる)装備のマシン(昔のカブなど)もやめたほうがいいでしょう。
具体的に挙げるとカブのC110やC125、グロムや12インチのスクーターが良いと思います。私はバーディー90を4万円で買い、燃費もいいし走りもめちゃくちゃいいので(さすがスズキ)大変気に入っています。パワーは重要でないですが、足回りやタイヤの状態が悪いものはメンテが必要です。
街乗りタイヤのどノーマルで大丈夫
フルバンクさせるならスポーツタイヤが必要だと思う方もいるかもしれません。ですが、普通の街乗りタイヤで十分フルバンクできますし、そちらのほうが練習になります。
街乗りタイヤでコーナリング速度を上げるには、ブレーキングで作った荷重を殺さずスパッと寝かせて曲がり、前輪を押し付けてグリップ力を作ることが必須です。直立状態で速度を落としすぎたり、浅いバンク角でブレーキを離してしまうと前輪の食いつきがなくなり、即転倒するようなことはないものの曲がらなくなります。
この荷重を掛けてグリップ力を作る操作はSSでも同じです。これを毎日練習することで様々な操作を試せるしヒントがたくさん得られるはずです。逆にサーキットだけでこれを練習するには、走行時間が足りないんですよね…。