常識すぎて誰も語らないバイク話

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SUZUKI KATANA (新型カタナ)

スズキがついに出した令和の新型カタナはその名に恥じぬ名車と言える完成度。楽しいバイクとは何かを知り尽くしているスズキだからこそ作れた最高のバイクだ。

新型カタナと電子制御の話

カタナは電子制御なしでも乗りやすく速いマシン。これがどう変化するのか。

作成:2023年3月12日
カテゴリ:SUZUKI KATANA

しばらく前の話ではあるが、GSX-S1000とカタナがマイナーチェンジした。

新型カタナの前期型はABSとTCS(3段階)だけ、GSX-S1000の前期型はそれにSDMS(アクセル3モード)が付いている。マイナーチェンジ後では、TCSが5段階になり電子制御スロットル化され、シフトアップ・ダウン対応クイックシフターまで装着されている。

どちらの方が良いバイクか、速いかは愚問だろう。また二輪も四輪も、同一モデルでも高年式のほうがより熟成・最適化が図られ乗りやすく完成度が高まる。特にバイクは減衰力やボルトの締め付けトルクを変えるだけでも大きく乗り味が変わる乗り物なので、カタログスペックではわからない変化で「なぜか高年式のほうが乗りやすい」と感じることも多々ある。

それとは別次元の話で、2000年代にABSやTCSが普及し始めた頃に「電子制御はバイクに必要か、楽しさをスポイルしないか、限界性能が下がるか、上手なライダーなら不要か」という話がよく出た。ここまで普及した現代で電子制御に疑問を持つライダーは少ないと思うが、しかしマイナーチェンジで電子制御が増えた時にその変化が気になるのは至極当然だと思う。

電子制御と車体設計

私は趣味でサーキットをたまに走っていて、また全日本で戦っているショップから話を聞く機会があるのでそれを書きたいと思う。

現行GSX-R1000R(生産終了という話もある)のライダーは純正の電子制御ではサーキットで若干ロスがあるため、社外製で細かい調整をするそう。具体的に言うとTCSが1だと強すぎて、0だとダメでその間が欲しいと。0.1、0.2と言ったイメージで細かく設定できるようにする。またクイックシフターもサーキットで使うには変速時間が長いため、すぐに繋がるように調整するそう。

では電子制御がなかった時代のSSでは勝てないのかというと、そうでもないらしい。例えばK9〜L6までのGSX-R1000でもそう大きなタイムの違いはないらしく、では電子制御は何のためにあるのかというと操作が楽になりミスも減り集中できるとのこと。もちろん全日本を走るレベルなので一般ライダーとは話が異なるが、本当に上手いライダーなら電子制御がなくてもマシンの完成度が高ければ戦えるそうなのだ。

他に重要となるのが、そのマシンが「電子制御ありきで設計されているかどうか」だろう。電子制御は当然その車両に対して最適化して市販化されるので、電子制御の後付というのは相当な開発力が必要になるし、逆に電子制御をオフにするというのはメーカーが想定していないので限界域が扱いづらい可能性が出てくる。

TCSで言えば、昔のTCSがない時代のリッターSSで170馬力以上あるマシンなら、高回転域でタイヤがいきなり滑らないような車体造りを重視しているのは当然だろう。しかし現代のSSであれば電子制御で限界域の過渡特性をマイルドにできるし、電スロ化されていればなおさらライダーのスロットル開度は微調整され丁度よい開度で綺麗に走る。だからフレームとか足回りレベルでは、以前ほど限界域の扱いやすさを意識せず設計できるようになっているはずだ。だから電子制御が付いているマシンはオフにすると扱いづらく遅くなると考えられる。

わりと日本のライダーは根性論が多く、気合とライテクで速く走るものと思っている人が多いと思う。だがメーカーとしては誰が乗ってもある程度速く走れ、上級者が乗っても限界域が扱いやすく速いというマシンを開発している。だから正解なのは最新型のバイクを普通に電子制御で乗ること、となる。

カタナで電子制御が追加されるとどうなるのか

ではTCSとABSしかない前期型のカタナはどうなのかというと、確かにタイヤが滑るか滑らないかという限界域で気軽に使える特性ではないと思う。アップライトなポジションというのもあるが、サーキットでSSほど限界まで使おうという気にならないし、正直それは怖い。限界域という面では、セパハンで軽量で剛性が高いSSのほうがはるかに試しやすい。

電子制御が増えた後期型に乗ったことがないので想像でしかないが、間違いなく全域で乗りやすくなり、特に高負荷時にライダーに寄り添ってくれる部分があるはず。スポーツ走行する上でそれは本当に助かることで、ライダーが疲れず苦労せず速いペースを維持しやすくなる。

ABSとTCSだけだと、ライダーのセンサーで少しずつ試すというのが全てになるため、ライダーの感覚を鍛えるトレーニングにはなるが、リスクはあるし長い時間と大きな労力が必要だ。短時間で速くなりたいならやはり電子制御が重要となる。

私はカタナでサーキットはほとんど走らず、街中と山道ばかりなのでむしろ前期型で良かったのではないかと思っている。特に電スロだとスロットル開度と実際のアクセルは違ってくる。マシンとの対話を楽しむならABSとTCSだけのマシンも大いにアリだ。そこにクイックシフターがあれば最高。

それと前期型のカタナは何より職人の手で作られた楕円形のスロットルパイプという、超絶アナログ的な方法であの素晴らしいアクセルフィーリングを作っている。そういった面からも、カタナは電子制御なしの素の車体の完成度が非常に高いマシン。

ちなみによく四輪で電子制御が入るからダメ、曲がらないという話があるが、二輪とはワケが違うと思っている。

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