常識すぎて誰も語らないバイク話

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SUZUKI KATANA (新型カタナ)

スズキがついに出した令和の新型カタナはその名に恥じぬ名車と言える完成度。楽しいバイクとは何かを知り尽くしているスズキだからこそ作れた最高のバイクだ。

新型カタナでサスの減衰を強めるとどうなるか検証してみた

サスペンションセッティングには様々な考え方があり、最終的には好みとなります。今回、レースをやっている方が前後車高を上げて減衰をかなり掛けた設定に調整してくれたので、どういった走りになるのかを私なりに説明します。サス設定は難解ですが、理解できれば世界が変わるのでできるだけ丁寧に説明します。

作成:2024年6月16日
カテゴリ:SUZUKI KATANA
  • 新車購入で走行14000km時点。
  • タイヤはブリジストン RS11、温感F2.15、R2.25。
  • ライダーの体重 55kg。

1000ccでレースをされている方が出したサスセッティング

実はカタナは弟と共有していて、レースをやっている人と弟で一緒に山道を走りに行き、私は参加していません。弟の走りをレースをやっている人が後ろから見て、4回ほどサス設定を変えてたどり着いた設定だそうです(乗ったのは弟のみ)。弟的には接地感が出て姿勢が安定したので走りやすかったとのこと。

場所ストック設定今回の設定
F Preload最弱から2目盛り締め最強
F Comp最強から2回転戻し最強から2回転戻し
F Tension最強から8クリック戻し最強から4クリック戻し
R Preload左から3段目左から5段目
R Tension最強から1回転戻し最強から1回転戻し

フロントを高くした車高

まず車体の挙動を決める最大の要因である前後車高から見てみます。

ストックから比べてフロントの車高は最大まで上げ、リアも2段上げてあり(最強から3段目)、かなり前後車高が上がっていることがわかります。またストックと比較するとフロントがリアより少し高くなり、安定した挙動となっています。

私はストックでもフロントが高く感じてフロントを下げているくらいなので、かなりフロントが高く感じます。フロントが高いとブレーキングが良くなり、また強いブレーキングでも安定して曲がりやすくなります。しかし逆にいうと、ブレーキを強く掛けない限りフロントが高すぎてアンダーステアで曲がりません。かなりのハードブレーキ仕様となっています。

またクリッピング付近でフルバンクしていて、アクセルもブレーキも使っていないところで、フロントが高くリアが低いのでやはり膨らみやすい。結果的に曲がらないのでもっと寝かせたくなってしまい、グリップ力を失いやすい状態です。

そしてアクセルを開ける時もやはり膨らむので、より深くバンクして開けるしかないのでハイサイドの危険性が上がります。

ワインディングではサーキットほどのハードブレーキングはできないので、これほどのフロントの高さが必要なのかと疑問です。

締めたフロントの伸び減衰

ストックと比べると、減衰力はフロントの伸び減衰を4クリック(1回転)強めています。伸びを強めると縮みも硬くなるので、フロントフォークを動きづらくしていることがわかります。

高めたフロント車高もあり、ブレーキングはかなり良く安定感があります。弱いブレーキも強いブレーキもコントローラブルです。

しかし減衰が効いているのでターンインで寝かせながらブレーキすると、フォークが沈むかわりにハンドルが切れ込んできます。フロントフォークが柔らかいバイクはブレーキでまずフォークが沈んで、落ち着いてからハンドルが切れて曲がります。硬いバイクはその逆でフォークが沈まずダイレクトなので、ブレーキですぐにハンドルが切れ始めるのです。なのでハンドルを内側から押して切れ込ませない必要があります。

フルバンクまでいくと伸び側減衰が効いているので、フロントを大きくストロークさせていれば低いフロントを維持したまま旋回性を上げることができます。スプリングレートを上げているわけではないので、ブレーキ量に対してのストローク量はストックとほぼ同じです。感触が違うだけです。縮み減衰がかかっていても沈むスピードが遅くなるだけで、ストローク量は変わりません。

強くブレーキしてフロントが下がっていれば伸び側減衰によりフロントを抑えている感覚があり楽なのですが、その反面あまり動かないため路面ギャップに非常に弱いです。路面の凹でフォークが伸びる余地はあるのですが、しかし強めた伸び減衰がフォークの伸びを抑えるので、なにかあればフロントがなくなるなという予感が強い。

私はストックでも山道レベルでは減衰が強すぎると感じて弱めているので、それより強めるとフロントから転倒すると考えています。

しかし伸び減衰を強める副次的なメリットとして、後ろ乗りでも楽な点が挙げられます。本来、スポーツライディングではフロントに体重を掛けて乗る必要があるのですが、しかし後ろに乗っていて前が軽くても、伸び側減衰が効いているのでフロントの低さを保てるのです。後ろ乗りでフロントが軽いのに、フロントが低いままで軽々曲がる感覚。これはイージーライディングで楽にほどほどのペースで走るには非常に良いと思いますが、強めた伸び減衰をフロントの強いグリップ感と勘違いしてペースを上げていくと、間違いなくフロントから転倒すると考えています。

リアに関しては車高が上がったものの減衰力はストックのままなので、特に言うことはありません。

そして空気圧が物凄く低い

皆さん御存知の通り、ピレリ ディアブロスーパーコルサの推奨空気圧は温感1.9〜2.1(V4ではもう少し空気圧が上がった模様)と一般的なタイヤより低いです。それは特殊なタイヤだからで、一般的なタイヤとは話が違います。RS11の温感でフロント2.15、リア2.25は低過ぎで、限界グリップ力は下がるし旋回力が落ちます。ハンドルの切れ込みも非常に強いです。

なぜこれほど低い空気圧にしたのかを推測すると、減衰を掛けて車高も上げて動きにくくなったサスで、空気圧を下げて柔らかくしたタイヤをダイレクトに潰し続けて乗るという方法だと考えます。サスが動かなければ動かないほど、タイヤへダイレクトに荷重がかかります。このサス設定だとおそらくフロント2.5、リア2.9だと走りにくいはずです。

昔は私もZX-10Rにロッソコルサを履かせて温感1.8くらいで走っていて、それを普通だと思っていました。しかし今はスパコルでない限りは基本的に指定空気圧が間違いないと感じます。

実際に乗るとこういう感覚に陥る

ターンインでブレーキと同時にめちゃくちゃハンドルが切れ込みリズムがとりずらい。ハンドルの内側を押して切れ込みを抑えながらブレーキすると、フォークが硬く沈みにくいためスパンと寝かせることができる。しかし沈み切るのに時間がかかるため、寝かし込みのタイミングとライン取りは慎重さが必要。

フルバンク中は減衰で姿勢が安定するが、どうも膨らむ。アクセルをいつもと同じように開けると外側に加速するので、アクセルを弱めざるを得ない。とにかくグリッと寝かせて頑張って開けて何とかする感覚。

アンダーステアが強く、またフロントフォークの路面追従性が低いので、フロントに無理させられない。頭をセンターから落としたりインに入れようとすると、フロントの接地感が気になってできない。頭をセンターでとにかく接地感を感じようとしないと非常に危険。

サスペンションセッティングは好み

ここまで読んでくれた方はほぼいないと思います。やはりサスペンションは難しいです。

私は1000ccでレースをしていないので、その方とは全然感覚が違うし走り方も全く違うはずです。私が完全に間違っている可能性もあります。

しかし私もサスペンションはしっかり勉強し、実践しています。私としては、路面が凸凹だらけの公道ではストックより減衰を抜いたほうが安全だし、速いと思います。

伸び減衰を掛けるとタイムが上がるのは事実です。しかし突然転倒するリスクが増え、公道ではリスクに見合いません。

私の今の走り方は瞬間的に強いブレーキで大きくストロークさせ、すぐに深いバンク角にして上体を下げ、できるだけ早いタイミングでアクセルを開けていくというものです。この走り方と強い減衰力との相性はよくありません。ですが私が間違っている可能性も当然あるのです。

もちろん私はセッティングしてくれたその方を悪く言うつもりはありません。好みが違うだけです。ただ1つだけ言いたいのは、一般人が安全に乗るには、できるだけ減衰は抜く方向でいったほうが良いということです。

↓は私のセッティングとその方のセッティングの比較です。

場所ストック設定自分の設定
F Preload最弱から2目盛り締め最弱から1.5目盛り締め
F Comp最強から2回転戻し最強から4回転半戻し
F Tension最強から8クリック戻し最強から12クリック戻し
R Preload左から3段目左から3段目
R Tension最強から1回転戻し最強から2回転戻し
場所ストック設定今回の設定
F Preload最弱から2目盛り締め最強
F Comp最強から2回転戻し最強から2回転戻し
F Tension最強から8クリック戻し最強から4クリック戻し
R Preload左から3段目左から5段目
R Tension最強から1回転戻し最強から1回転戻し

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