常識すぎて誰も語らないバイク話

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雑談

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2017年9月4日「秋風に想う」

作成:2017年9月4日

少し用事があり、25kmくらいだったんだけど夕方に10Rに乗った。

暑い夏が過ぎ、唐突に秋になった。小春日和のような心地良い陽気はなく、寒々しい日々である。大袈裟に冬用ライダージャケットとオーバーパンツを履き、ただ市街地を走る。

体はぽかぽか温かく、吹き抜ける風は涼しい。一般車と一緒に流してるだけ。だが妙に落ち着き、どこから来るのか心地よい時間が続く。

夕暮れ時、寂しい色合いに染められた街中を黙々と走る。言葉もなく、考えもなく、だが不思議な落ち着きが常にあった。

荒々しいはずの10Rが、右手のスロットルのままに従順に走る。しばしば起こる、バイクとの一体感が異様に高まる時間。

このバイクとの一体率が極めて高くなる現象はなんなんだろうとたまに思う。右手のスロットルに寸分違わず反応し動く車体。丁寧に開けることで、こんなにもバイクは穏やかに走るんだという感嘆。

どうやっても一体感を得られない時もある。アクセルをゆっくり開けても、一杯開けてもどうも思った動きと違い納得できない。思い描くマシンの動きと現実が一致しない。どうすれば納得できる走りができるのかわからず、半ば諦めの境地で走り続ける。

どうやったら一体感が高まる時間が訪れるのかはわからないが、起こりやすい状況、起こりにくい状況は容易に推測できる。

まず急がぬことである。交通の流れを読みすぎてはいけない。ある程度先読みはしつつ、しかし急ぐ必要はないんだ、このまま流れに乗るだけでいいんだと思うことだ。

次に周囲の車を尊重することだ。バイクが走っているだけで大抵は後続車は車間を多めにとるし、抜かしやすいように車線を寄ってくれたり、信号待ちで先頭に割り込んでも何も言わない人が大半だ。バイクから見れば車のドライバーはとてもマナーが良くモラルがある。

わざわざ感謝するほどではないが、それでも有り難いなと思うことは無駄ではないだろう。その謙虚な心持ちが、一般道を走る際に自分の収まるべき立ち位置を決めてくれる。あなたが信号待ちで止まっている時、そろりと車間を開けて後続車が静かに止まったら、なにかしらの配慮をしてくれてるのかもしれない。

そして操作が丁寧であることである。急がず、確実にゆったりと操作する。これはバイクからの情報をじっくりと感じることができ、一体感を高めることに大きく寄与する。

じわりとアクセルを開ける。回転数が上昇し、トルクのかかり方からエンジン特性がわかる。じわーっとフロントブレーキを掛ける。フロントタイヤがグニュッと押し潰されながら、フロントフォークに力がかかり縮んでいくのがわかる。

自分の操作に忠実に反応してくれる車体を感じた時、乗り手は征服感を得て満足するものだ。

気候と装備も大事である。暑い夏ならフルメッシュジャケット、寒い冬なら風を全く通さない完全装備。特に寒さを感じる時は体が強張り辛いので、少しくらい暑いと感じるほどでもいい。走行風で涼しいと感じるのはとても気持ちいいものだ。だが、後に強く記憶に残るのは寒さに震えた日だったりするのは面白いところ。

どうやら車体が何であるかはあまり関係ないようである。街乗りに適さない10Rや、私が酷評しているジャイロでさえ一体感が高まり幸せを感じる時間は間違いなくある。

人間の感性はかくも捉えどころのないもののようだ。そしてバイクは車よりずっと感性に訴えかけてくる。バイクに乗っている、ただそれだけのことなのにどうして心がここまで動かされるのかわからなくなることが多い。不思議で魅惑的な乗り物だ。

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