最新SSざっと乗り比べ(2016)
ここ1年で最新SSを含むスポーツバイクを6台試乗した感想。全て街中での試乗なので限界性能とかは全く不明だけど、特性は多少理解できたつもり。
書いている人のスキルについては管理人について/現在のスキルなどの記事をどうぞ。
試したバイク(乗った順)
- BMW S1000RR (2015)
- Aprilia RSV4 Factory (2015)
- Triumph デイトナ675 (2015)
- HONDA CBR1000RR (2016)
- KAWASAKI ZX-10R (2016)
- YAMAHA YZF-R1M (2016)
ライダースペック
体重: 55kg
座高: 普通の日本人より高く胴長短足
BMW S1000RR (2015)
パワーと足回りのバランスの良さが記憶に残っていて、これといって特徴に残る派手な特性はなかったけど純粋に速いと思わせる車体だった。ディーラーだったけど足回りの設定がストック状態かは聞いてない。
倒れこみは滑らか気味でサスもコシがあり、緊張せずに走れる。パワーは自分の10Rより全然あり、中回転域からの伸びは強烈だった。
結構前に試乗したので正直あまり覚えていないけど、悪い点が見つからなかった完成度の高さだったと思う。
Aprilia RSV4 Factory (2015)
まず各部の質感の高さと圧倒的な存在感、格好良すぎる車体にしばらく目を奪われる。写真写りはイマイチな時もあるけど、実車を見れば誰しも唖然とする。
サーキットでの試乗から持ってこられた車体でタイヤのRS10Rは端まで凄いことになっている。乗るとシート高が高く、シートの沈み込みもあまり多くなく足回りはかなり固い。自分の10Rを高度に固くした感じ。
タイヤの特性から滑らかに深く倒れこんでいき、ハングオフで荷重を載せながらターンインすることに全力で合わせているような挙動。
重心は高く、アクセルワークを使わないと直線スラロームのような連続の切り返しはできない特性。アクセルワークと体重移動で車体の滑らかかつ絶対的な倒れこみに同調して、荷重をかけながらターンインする特性。
パワーモードを最弱の3にされて100馬力程度ということで上のパワーはわからなかった。高回転までのパワーは存分にあったが、固い車体でアクセルのツキはキツメなので街乗りの交差点では緊張する人も多そう。
Triumph デイトナ675 (2015)
試乗用にローダウンされ足回りも凄く柔らかく、タイヤも適度なスポーツ用だったので乗りやすさ抜群になっていた。
挙動に関してはストック状態とは大きく違うことを前提で書くと、滑らかな倒れこみつつ後輪がどんどん外側に入っていき(オーバーステアのごとく)、外側ステップで踏ん張りながらアクセルをどんどん開けられる挙動で楽しい。
足回りはフニャフニャではなくコシもちゃんとあって、車体だけで見ればよく出来た400ccに乗ってる感覚だった。緊張感のかけらもなく、純粋にバイクって楽しいなあと思える稀有な1台。中排気量で柔らかめな足回りのバイクって本当に楽しいね。
パワーに関しては下から上まで思ったよりよほど鋭く強力に、そしてアクセル開度に比例して加速する。4気筒のようなトルクの谷がないため扱いやすい。675って想像以上にちょうどいいパワーが出る。街乗りなら大型乗りでもこのパワーで不満が出ることはないだろう。適度に高回転域が使えるから楽しく、絶妙である。
SS欲しいんだけど街乗りばかりで…みたいな人にはベストマッチ。SSが怖いという人も、この車体のように足回りを柔らかくすれば、ネイキッドよりも乗りやすくて超絶楽しい車体になる素性を持つ優良バイクだ。
HONDA CBR1000RR (2016)
試乗が短く直線しかなかったためわからない点が多かった。またリアショックはオーリンズ製に換装済みでサスもサーキット用に調整済み。タイヤは確かRS10。
無駄がなくストイックな挙動という印象が強く、倒れこみは軽快だが低重心気味のせいか倒れこんでいるだけで荷重はそれほど載っていない。
また足回りも少し硬めになっていて全挙動が軽快だが、アクセル・ブレーキワークと体重移動でしっかり荷重をかけていかないと、思ったようなコーナリングはできなさそう。
多分CBRだからそれでも曲がってくれるんだろうけど、車体のフレンドリーさに甘えて楽をしてしまうのは避けたいと思う。
低重心・軽快・足回り硬め、という特性でよくできているが、素っ気ない印象も強い。S1000RRのほうがコシが強かった気がする。またRSV4は重心が高いためバンクするだけで荷重が自然に載るような挙動だ。
真面目なバイクだけどあまり面白くないなと純粋に感じた1台。
KAWASAKI ZX-10R (2016)
電子制御満載の新車でこれもサーキット用に足回りが少々調整されていた。タイヤは例のごとくRS10R。
乗ってみると驚きの路面追従性で、街中で路面の起伏が多いはずなのにそんなの何もないかのように車体がピタッと安定している。これはSSなのに。
例えば赤信号で止まる時にも、ブレーキをかけると車体は少しも横に傾かずスーッと静かに止まる。しかも足回りにコシがありほとんど固さを感じさせない、SSではなかなか見られない挙動。SSで止まる時は普通、もっと横に傾いたりサスが突っ張ったりするものだけど…。
高速道路での試乗だったので緩やかなコーナーしかなかったけど、足回りがピタッと路面に張り付いて捉えながら、車体は穏やかに倒れこんでいく。ライダーへの路面状況のフィードバックはあくまでこれまた穏やか。
ライダーに不安を抱かせる要素がないまま、車体が路面に張り付いたまま、どうぞハングオフしてくださいとばかりにライダーの体重移動を待っているような挙動。体重移動しなければそのまま穏やかに曲がり続けるのである。アンダーステアもなくオーバーステアもなく、言わば高次元なニュートラルステア。
高速道路だったので体を少しだけ出す程度しかできなかったけど、やはりその分だけしっかり曲がってくれる。ライダーに忠実なバイクってこういうことだと思う。お節介な軽快感はなく不安要素もなく、普段は静寂でライダーが動けば全力で同調してくる。
この後、自分のC型の10Rに乗るといかに粗雑な特性なのかと思ってしまう。足回りは無駄に固く柔軟性0だし、軽快なのはいいけど荷重がついてこないし、とにかくゴツゴツしてる。バイクの進化って凄いね。
YAMAHA YZF-R1M (2016)
YAMAHAが全力で開発した、今SSの中で最高峰の1台。サーキット用で電子制御満載で、しかも街乗りもできるとのこと。試乗したものもサーキットでの試乗からきたものでタイヤはやはりRS10R。えらいことになっています。
またがるとサスは柔らかくかなり沈み込む。フロントフォークもよく動いて、緊張感を与えないのは素晴らしい。実は電子制御でこの段階ではサスは柔らかいのである。
走りだすと挙動は軽快かつコシがある逸品で、直線スラロームをすると軽快に切り返せるのだが、バンクして荷重を受け止める時にしっかりとサスが入りながらコシがあって受け止めてくれる。だからそこから切り返す時も柔軟に力強くいける。SSでこんなコシがある挙動はあり得ない。
あまり速度が出せない街中だったので普通の交差点の右左折になってしまったが、10Rに近いような路面追従性で安定している。だが10Rと違うのはよりオーバーステア気味で後輪が外側に入り、ライダーのハングオフを促してくる点。そう、ここから外側ステップで踏ん張りながら体を出せば相当気持ちいいコーナリングになるのは間違いない。
ここまで体験した低速度域では10Rよりも足回りは柔らかく、街乗りでの軽快感は上回る。10Rはニュートラルかつ動じない挙動だが、R1Mは柔らかめな挙動でいつでもライダーの積極的な操作を受け付ける構えだ。
デザインもさすがYAMAHAで素晴らしく、サーキットを本気で走りたいという人にはやはり最高の選択だと思う。もっと速度を出してコーナリングしてみたかったところだけど、多分素晴らしい挙動のはず。
まとめ
最新のSSはどれも目覚ましい進化を遂げていることがわかり嬉しかった。カタログスペックではどんどん重くなっていってるし、本当に速くなってるのかわからなかったけど、乗ってみれば納得の完成度。
もし金があって新車を買えるならと考えると、街中でのプレミアム感を味わうならRSV4。これの存在感は圧倒的で美しい。重心が高く固いから街乗りには向かないけど、それもあって逆に乗ってる感が凄い。
全力でサーキットならやはりR1M。文句のつけようがない。
しかし色々な用途に使えて間違いないのは、自分がカワサキ乗りなのを差し引いても10Rだと思った。あの足回りの完成度の高さは驚いた。あれだけニュートラルだから冷静に走りに集中できるんじゃないかと思う。