常識すぎて誰も語らないバイク話

ベテランライダーがバイク乗りの考え方、実情、ライテクなどバイクの世界を語ります。
毎日更新中!所有歴はカブ、RS50、スパーダ、イナズマ400、GSX1400、ZX-10R、DR-Z400SM。

試乗レポート

色々なバイクを試乗しており、その中から有用そうなものを書いていきます。

Buell Firebolt XB12R インプレ

あまりまとまっておらず、ダラダラと書いているので長文です。

書いている人のスキルについては管理人について/現在のスキルなどの記事をどうぞ。

作成:2020年11月23日

どんなヤツだ

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なんか新入りが入ったらしいじゃないの。
細かくは知らないんだけどスポーツバイクなんだって?
エンジンはどんなの積んでるのよ?

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エンジンはV型2気筒だな。

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VツインっていうとDucatiやapriliaのSSかしら?
それともVTR1000FやSV1000Sみたいなヤツ?

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ハーレーのエンジンだ。

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は? ハーレーだって???
それじゃあスポーツスターみたいな、アメリカンでアップハンのヤツ?

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セパハンだ。

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ハーレーのエンジンでセパハン!?
そういうバイクってMT-01しか知らないんだけど。
いやあれもセパハンではないか。

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バイクメーカーはハーレーではない。

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ハーレーのエンジンなのにメーカーはハーレーじゃない?
ビモータかしら?

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惜しい、ビューエルだ。

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wtf!?

その名は Buell Firebolt XB12R

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ビューエルは一般的なバイクとはあまりにも構造が違いすぎ、詳しくはないため知っている範囲で書くことにする。間違いがあれば申し訳ない。

また素性の知れない中古車の上、所々ストックとは違った仕様となっているのが確認できるので注意。

ビューエル社がハーレーのエンジンを使って作ったマシンがこのXB12R。実際はこのバイクのためにビューエルがエンジンを新設計したと聞いたが、ハーレーの構造をしているのでハーレーのエンジンと言って間違いはないと思う。

中央下に重いエンジンを積んでいて、それでいて車体は他のバイクとは別次元でマスの集中化がされている。SSなどが「運動性を高めるためにマスの集中化が図られている」などと評されるのとはレベルが違いすぎる。

ガソリンはフレームの中に入っていて、エンジンオイルはスイングアームの中に入っている。ドライサンプでエンジンの下にオイルパンがなく、マフラーもエンジン下に収まっているなど、徹底的すぎるマスの集中化と低重心化。

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そのため全ての挙動において、重いは重いんだけど、でも軽くも感じるんだけど、でも重いときは重いというよくワケのわからない重量感を演出している。例えば停止線で停まる時に、マスの集中化と低重心のために400かのように小さなノーズダイブで済むため「あ、軽いんだな」と思わせてくれるのだが、しかし重さ自体は歴然と存在するため、軽量車のようにいい加減に足を付いたりすると重いマシンが遅れてつんのめる形となり、「え、やっぱり重さはあるのね」と驚くことになる。

ホイールベースが250並に短く、重さを感じづらくて挙動がクイックなのも一因だろう。

跨ると前後長は250、左右に揺らしてもそれほど重くない。ハンドルもSSとして見ると近く高く開いていて楽なポジションだ。

エンジンは完全にハーレー

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大排気量の2気筒エンジンの経験はMT-01とXV1900CUだけだったのだが、この2つとは明確に違う鼓動感となっている。

まずMT-01は振動が大きいが、金属的に硬いのが特徴。エンジンの強い振動が減衰されずにダイレクトに人間を襲い、機械的で個人的に気持ち良いとは思わなかった。

XV1900CUも振動は非常に大きいが、ドドッドドッと硬さの取れた心地よい振動でライダーへの伝え方が非常に上手いと感じた。

それに対してXB12Rは、ボクサーがボコボコに叩きまくってるサンドバッグの上に跨っているようなものである。振動の大きさはMT-01と同じくらいだが、自分の股下でボコボコドコドコと凄まじく大きなものがパワフルに揺れまくってる感覚。

ハーレー乗りが気持ちよさそうに巡航してるのもわかる。2500〜3200回転ほどで大粒の鼓動を楽しめ、特に3000回転は至福の巡航を楽しめる。それより下では爆発が不安定になって心地良さを感じにくく、逆に上では鼓動が早くなることでスポーティーとなる。

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ギアは5速までしかないのだがワイドなギアレシオのため、街中のゆったりな四輪の後ろから高速道路まで、広い速度域で最高に気持ちよく走ることができる。ただし加減速はできるだけ少なめに、一定速巡航を意識したほうが良い。

1202ccもあるのだから速いのかというと、そこそこ速いという表現になる。出だしのトルクはやはりあり、そのままレッドゾーンまで同じ加速度で回るが、回した600SSには置いていかれる。だが直線でここまで気持ち良いエンジンなのだから、完全にスポーツ用の精密4気筒と比べるのはお門違いだ。

全開にすれば公道では全く困らないパワーを十分に持っている。

一般的なバイクとはあまりに違いすぎる乗車感

現代のバイク乗りはバイクとは大体こんなもの、という固定観念が出来上がっている。自分で乗るにせよ、他人の話を聞くにせよ、固定観念のフィルターを通した理解となる。

しかしビューエルはあまりにバイクの常識とは異なっていて、驚きの連続となる。いちいち挙げてはキリがないが、覚えていることを並べてみる。

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全長は250クラス、大きさ的には400クラス。しかし始動しようとすると頼りなくセルモーターが回り、ワンテンポもツーテンポも遅れてから暴力的なドコドコ音が始まって車体が揺れまくる。高品質な日本製バイクではないので始動性は悪いらしい。

発車すると股下でとんでもない振動が始まり、ぶっ壊れるんじゃないかと心配になるほどである。日本製の精密4気筒とはベクトルが真逆のエンジンである。日本車しか乗ったことがないと超絶スムーズな4気筒が普通と思ってしまうが、大排気量の単気筒や2気筒エンジンのなんと力強いことか。暴力的力の塊である。

しかし3000回転ほどになるとその振動のリズムが揃い、意識が別世界に入り始めるほどの心地よさが襲ってくる。SSのスリルからの非日常感とは違う。荒れ狂うバッファローに跨って突き進んでいるかのようだ。

前が詰まれば早めにシフトダウンしなくてはいけない。クラッチを握って空吹かしをする。物凄く回転の落ちが遅いエンジンである。普通のバイクよりやはりワンテンポもツーテンポも遅れてシフトを入れる。しかしベルトドライブなのでラフに操作してもシフトショックは極めて小さく滑らかで、シルキーに操作していける。このエンジンにベルトドライブ、街乗りに最高にマッチしている。

そして信号待ちで停車。シート高が低いためにベタ足で、軽々と停まることができる。

不思議なコーナリング

あまり攻められずよくわからなかったので、わかる範囲だけ。

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ホイールベースは短いのに剛性は高いマシンである。フレームとスイングアームが極太で、車体がしなる感はない。リアもしっかりしていて、250のように小さく感じるのに剛性は完全に大型車だ。

ストックはわからないが、このマシンだとフロントフォークだけが唯一柔らかかった。ブレーキを掛けるとホイールベースがさらに短くなり、まるで真横に旋回しているかのようにグイッと小回りをする。フォークの動きが良く、いかにフロントをコントロールして走るかが鍵となる。SSのようなフロントの剛性、フロント任せで走れる感覚はない。

本当に独特すぎるハンドリングを持つマシン。それほど緊張感なくファンライドできるのも魅力だった。

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正直、かなり良いバイクだと思う

これまでの経験から「街中をただ走るだけで楽しいバイクって何?」と考えると、大排気量の2気筒が一番、次点でBMWのR1250GSやスズキの油冷エンジンとなる。

大排気量の2気筒とはもちろんアメリカンである。そうなるとすり抜けできないし、もちろんスポーツもできない。風圧の問題で高速道路も辛いし長距離乗るのも難しい。街乗りに特化していてかなり贅沢なチョイスなのである。おまけに非常に高い。

アメリカンと同じ気持ちいいエンジンを、スポーツできるマシンに積んだら…という夢のようなコンセプトがまさにビューエルのマシン。

「そんな無茶苦茶できるわけない」と普通は考えるだろう。確かに荒削りの部分はあるし完璧とは言えない。だがとにかく「バイクを楽しむ」という観点から見て、かなり高次元の出来栄えであることは間違いない。

楽しみとは感性の問題であり理屈であれこれ言うものではないが、理屈で考えても、ただの直線が最高に楽しいし、スポーツ走行もできるし、十分すぎるパワーがあるし、車体自体は軽々としてるし、ポジションはキツくないし、すり抜けもできるし高速も乗れる。どう考えても平均点が高いマシンなのである。

ビューエルとしてはスポーツマシンとして売っているだろうが、個人的にはやはりハーレーのエンジンの恩恵が大きいと思う。40キロで走って脳汁が出てくるマシンはなかなかない。

アメ車だから故障が怖い、というのは誰でも思うことだが、意外にそれほどでもないらしい。この楽しさの前ではそもそも大きな問題とは言えない(パーツが供給されているのかは知らないが…)。

誰でも一度乗ってみれば素晴らしいマシンとわかるだろうし、もっと売れてほしかったと思う。リッターSSと並ぶ値段だったので売るのは難しかっただろうが、果たして乗っていて幸せになれる、買う価値のあるマシンとは何かを考えさせられる。

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