常識すぎて誰も語らないバイク話

ベテランライダーがバイク乗りの考え方、実情、ライテクなどバイクの世界を語ります。
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KAWASAKI '05 ZX-10R

ZX-9Rから大幅に戦闘力を高め満を持して投じたKAWASAKI入魂のSS。しかし高いカタログスペックとは裏腹に全体の完成度は高くなかった。

C型ZX-10Rが人にオススメできないワケ

C型10Rを人にオススメできるのかと言われれば、ほぼ無理だろう。このバイクは良い点もあるが、悪い点が大きすぎて人を選ぶ。結論から言えば、ある程度テキトーに乗れれば十分と思う人、カッコよくて自分が気に入ればそれで全てな人、あとは乗りにくいバイクで走るのが好きなマゾな人にオススメできる程度。

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作成:2017年1月13日
カテゴリ:KAWASAKI ZX-10R

スポーツ走行が難しい

SSなのにスポーツ走行が難しい。ネイキッドより難しいはずがない? それはイエスともノーとも言える。

まずこのバイクの特徴を思い出してほしい。軽量で低重心でヒラヒラ。なので街中での取り回しはかなり良く、普通に走っている分には快適に走れる。サスやフレームが硬いのでぎこちなさはあるかもしれないが、恐怖感などを感じることは少ないはず。

ただこれがスポーツ走行となるとまた違ってくる。C型10Rは全体の剛性が非常に高く、サスも体重の重い外国人がサーキットでガチで走り込んだ時に丁度いいくらいに固いものとなっている。だから体重の軽い日本人が峠とかで走るにはあまりに固いのだ。

もちろんサスのスプリングを柔らかいものに変えればサスは大分動きやすくなると思う。C型10Rでちゃんと走ろうとするなら、よほど体重がある人を除いてサスのスプリング変更や、特にリアサスを社外品に変える必要はあると思う。だがそれだけでは万全ではない。

どう考えても一般人には車体の剛性が高すぎて扱いにくい。例えばビッグネイキッドで考えてほしいんだけど、ブレーキやアクセル、体重移動で車体に荷重をかけると、ある程度おいしいところまで荷重がかかって、でも車体のしなりやサスの適度なコシなどのおかげで荷重が過度にかかりすぎてピーキーな挙動をすることはないはず。

だがC型10Rはそういった遊びの部分が極度に少なく、例えば二次旋回でアクセルを開ければ車体で吸収する部分は少なくて大部分の荷重がタイヤに流れてコーナリングフォースに繋がってタイヤが潰れながら横に流れる。ターンインでもアクセル開度、体重移動量、ブレーキング量、そういったもの全てがあまりにダイレクトに影響し合い挙動に現れる。

これは本当に上手い人にとっては良いことだと思う。完璧な操作をすれば忠実に荷重がかかって挙動に反映され、意のままに操れる。だがよほどサーキットやジムカーナで走り込んでいる人を除き、あまりに操作に忠実に反応しすぎて誤った操作が許されず扱いづらさが目立ってしまう。

これは車体の剛性が高すぎることに起因すると思う。車体にしなやかさ・遊びがほとんどないので、ネイキッドのようにある程度荷重をかければ大体ほどほどに無難に曲がる、といったことが全くなく、操作した分だけ荷重がかかってしまうのでライダー側が上手く加減をする必要がある。

またこれはラジアルタイヤを履いていることにも一因がある(ビッグバイクでバイアスタイヤなんて履かないけど)。小排気量車にバイアスタイヤを履いている場合、曲がり方はバンク角により発生するキャンバースラストに依存する部分が大きいが、ラジアルタイヤはバンク角よりもブレーキ・アクセル・体重移動によってタイヤに荷重をかけて潰し、コーナリングフォースを発生させることでタイヤを横方向に流すことが重要となる。

つまりある程度バンクすれば大体同じように曲がるバイアスタイヤと違い、いかに荷重を上手くかけるかが大事なわけで、だが10Rはあまりにリニアに荷重をタイヤに伝えてしまうので、状況に応じて操作を上手くして調整しないと「曲がらない・荷重かからない・曲がりすぎ」といった現象が容易に起こってしまう。

これは最新のSSや友人の14Rに試乗した時に強く実感した部分で、昔のSSは軽くて剛性とかはあるけど、それが曲がりやすさには直結はしていない印象で、近年のSSは車重は重くなっているがサスがよく動きコシもあって、全体の挙動が整っていて実に乗りやすい。自分の10Rよりも友人の14Rのほうがほとんどの場面で早く走れると思ったほど。

C型10Rと最新のSSを比べるとすれば、ZRX1200Rと最新SSの走りやすさの違いくらいはあると思う。抽象的ながら。それだけC型10Rは乗りづらく、最新のSSは本当に本当に乗りやすい(10RとR1Mは特に凄かった!)。

自分もスポーツ走行は好きなので本音を言えば乗り換えたいとも思うが、C型10Rにも良い点がないでもない。あまりに正直に操作が挙動に出て誤魔化しが効かないので、これで練習すると大体何でも乗れる。最新SSの乗りやすさには驚愕するし、14Rに初めて乗ってタイヤのほとんど端まで使えたのもC型10Rに普段から乗っているからなのが実際のところ。マゾ向けだけど根性があるなら練習には適していると言え…なくもない。

その他の欠点

まあC型10Rを買うということはほとんどはスポーツ走行への期待かデザインで買っているということで他にあまり言うことはないけど、あえて探すとすれば…。

  • 整備性は悪い。プラグ交換は自分でやるのは無理だと思う
  • まったり街乗りしようとすると、4000回転くらいでトルクの谷があってそこを過ぎるとパワーが出てくるので、車のペースに合わせにくい(マフラーの問題かも)
  • 年式のわりに中古車相場が高い。スポーツ走行の性能を考えれば明らかに割高

あまり思いつかなかったのでこのくらいで。

好きな人は関係なく乗る

だがC型10Rに乗ろうとしている人にとってそれらの欠点は些細なこと。デザイン、希少性、マゾ向けなスポーツ走行特性、KAWASAKIなどなどの理由で欲しくなるんじゃないだろうか。

自分自身もデザインとダイレクトな挙動が好きで乗り続けていて、他の欠点なんかどうでもいいと思っている。もう慣れているので下道でも高速でも乗っていて別に疲れないしツーリングにも使えるし、スポーツ走行はやはり楽しい。

結局は感性が合えば全然問題なく乗れるバイク。

C型10Rが合う人、合わない人

大体の場合はこのスポーツ走行の特性が問題になる。

別に街中を適当に走れればいいと考えているなら全く問題ない。街中は軽快で楽々。デザインもカッコイイしね。

山道をメインに考えているならやめたほうがいい。山道で使うには車体があまりに硬く走りにくい。もちろん走れないということではないが、有利な点はほとんどないので他のバイクのほうが楽に走れるのは間違いない。

サーキットに行くならこれもやめたほうがいいと思う。サーキットということは本気ということなので、C型10Rなんかで遊んでないでちゃんとしたSSで走ったほうがためになる。上手い人が乗ればC型10Rでも早いだろうけど、それなら他のSSの方がさらに早いはず。

スポーツするためのSSで山道やサーキットにはNGっておかしい話に見えるが、このデザインが気に入っていて最新SSが買えなくてとりあえずの練習用とでも考えてるなら全然アリだと思う。自分がそんなところなので。少し古いバイクだけど、駐車しておくと普通のバイクより注目されやすくて少し嬉しかったりする。結局は自己満足しやすいバイクということ。

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