7) 大型二輪一発試験
「え、普通に乗れる CB750。結果はまさか……!?」
一発試験、第1回目にしての奇跡。
鮫洲での一発試験も累計9回目の挑戦となっていた。8回目で普通二輪免許がようやく取れたわけであったが、一発試験は普通も大型も難易度に大差はないと思われる。つまり、これは「9回目の一発試験の挑戦」と言えるのだ。CB400SF が CB750 に変わり、ほんの少し課題走行の基準タイムが厳しくなっているだけなので、普通二輪の一発試験を受かっている人ならすんなり臨めるはず。
イナズマは油冷エンジンの構造上、重心が高いらしい。重心が高いと、特に低速バランスや Uターンが難しくなる。それでも私は頑張ってイナズマを乗りこなせるように、色々と意識しながらイナズマに乗っていた。そのおかげで、イナズマは普通には乗れるようになっていた。また、普段の街乗りから法規走行を意識していた。
それがあったからだろう。教習車の CB750 が恐ろしく乗りやすく感じた。HONDA のバイクはマスの集中化などで重心が下で固まっていて、乗り易くなっているのだろうか…? 低速でも楽に運転できた。
あるべき場所に落ち着く、まるで自然なポジション。軽やかなハンドリング。極低速でも崩れない絶対的な安定性。CB750 からライダーへ伝わる「問題ない」という意志。恐ろしく扱いやすいバイクだった。
それで試験第1回目はなんと、減点が急制動の際のブレーキフライングでの10点のみ。危うく加速不良にされそうなところもあったそうだが、なんと90点で合格してしまった。本当に信じられなかった。一発試験を1回で受かるなんて、普通の人にそう簡単にできるはずがない…のに。
こうして大型二輪免許もすぐに取ってしまった。普通と大型で、合わせて6万円くらいで取ってしまった計算になる。貧乏学生の私にはとても嬉しい。何より、一発試験で自分の実力が発揮できて合格したというのは、実に満足のいくことだった。
もちろん、一発試験での走り方というのはもう、ある意味「儀式」のようなものなので、儀式の走り方ができるからといって別段凄いというわけではない。でも、一発試験に合格するという大きな目標を、努力を重ねて達成できたのはとても嬉しく思う。
大型免許を取っても、すぐに乗り換える気はなかった。まだまだイナズマを乗りこなせてなかったし、飽きてもないからだ。大きいバイクは魅力があるのは確かだが、免許を取って乗れるようになったからと早急に乗り換えるのが良い選択肢とは到底思えなかった。