9) 練習練習また練習
「今日もダメだ! 力が入ってまともに走れない!」
イメージとは裏腹の苦痛な練習が続く
練習用バイクとしてVTシリーズのどれかを買おうと、消去法で絞っていく。VTRは少し高いし、ゼルビスはツーリング向け、残ったのはスパーダかVTZかVT250Fだった。この中ではスパーダが一番金がかかっていて贅沢なバイクなので狙っていたところ、10万円で落札に成功し早速取りに行く。
その帰り道、あまりの乗りやすさに驚嘆する。とても軽いし、簡単にバンクして曲がるし、すり抜けが一切怖くない。まるで何でもできてしまうかのような錯覚。イナズマ400を扱いきれず自信喪失していた自分は一発でスパーダを気に入ってしまった。GSX-R600をハイサイドしたお詫びとしてイナズマ400を弟に預けっぱなしにしても全く気にならなかったほどだ。
スパーダと講習会の相性はまさに抜群で、正しい走り方を知らなかった自分は跳んだり跳ねたりと変な走り方をしていたが、それでも今までより全然速く走ることができた。
しかしある程度速くなってくるとすぐに壁が現れる。それ以上速く走ることができない。おまけに体の動きが硬くて上体をセパハンで支えているものだからぎこちなく、調子の波が激しくまともに走れない時も多かった。そういう時は酷く落ち込み、自己嫌悪に陥った。
本来スパーダを買った一番の目的は何だったか。速く走ることではなく、上手くなるためだ。峠での自己流の走り方じゃなくて、大げさに言えばスラローム走行で磨きあげた正当なライテクを身につけるためだった。
やるべきことはたくさんあった。ライテクを勉強して自分の走りを分析できるようにならなくちゃいけない。周りの人の協力もあってわかった最大の問題は、上体が硬くて曲がりたい方向を向かずに外に逃げてしまい、内側の腕でハンドルを突っぱねてしまうこと。数年分の走りで癖になったこれの修正には、不器用なのも問題だが実に2年以上の歳月を要した。
スランプもあったし、走ること自体がつまらなくなったこともあったが、センスのない自分はひたすら練習しかないと地道に練習を続けた 。その間、本当にスパーダは順従で良く言うことを聞いてくれ、今の自分があるのはスパーダのおかげである。