常識すぎて誰も語らないバイク話

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SUZUKI KATANA (新型カタナ)

スズキがついに出した令和の新型カタナはその名に恥じぬ名車と言える完成度。楽しいバイクとは何かを知り尽くしているスズキだからこそ作れた最高のバイクだ。

新型カタナ スポーツ走行のインプレッション

カタナがどういったハンドリングで、どのくらいスポーツ走行に向いているのか、把握している人は少ないと思うし、誤解されやすいマシンだとも思う。新車で買ってから9000km走行し、サーキットから峠、街乗りまで幅広く乗った経験から書いていく。

作成:2022年10月22日
カテゴリ:SUZUKI KATANA

新型カタナのワインディングでのサスペンションセッティングのページにオススメのサスセッティングを書きました。

サスペンション設定は全てストック、タイヤはRS11で空気圧は前後とも冷感で2.5

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↓RS11との相性抜群で、フルバンクしても恐怖感は少ない

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ご存知の通りカタナの大部分はGSX-S1000と共通で、乗り味はかなり近いと言えるが比較すると違いがある。GSX-S1000はバーハンドル化したリッターSSと言えるくらいストイックで、「バイクを楽しむ」という意味ではカタナに大きく軍配が上がる。カタナは高めのバーハンドルとやや低めに感じるステップによって、普段使いでは楽でありながらスポーツ走行ではダイナミックにマシンを動かす面白さがある。

街中やちょっとしたコーナーで、セパハンや低いバーハンドルでは淡々と曲がるだけだが、カタナの高めのハンドルは舵角の入り方の主張が激しいため面白く、スパッと切れば小気味よく小回りする。また個人的にはカタナは0スタートが最も楽しいと思っていて、これもハンドルが高いためである。純正のバーハンドルはよくできていて、前傾が必要となるサーキットでも違和感なく走れる。

中身はSSなのでサーキットで限界走行する際はフロントに積極的に荷重して体を落として乗ることになるが、しかしバンク角35度くらいまでならアップライトなポジションの後ろ乗りでも気持ちよく走れる特性をあわせ持っている。実はリーンアウトも可。幅広い乗り方を許容してくれるのだ。

山道を普通に走る分には腰をややイン側にセットして、後ろ乗りで背骨を曲げて体重を下に落とすくらいで十分で、ハンドルの高さからは想像できない鋭い旋回ができる。前後サスはSSに比べれば柔らかいが、しかしストリートファイターとしては固めであり、立ち上がり加速でリアサスをギューっと沈めながら気持ちよく駆け抜けられる。

しかし本気で走るならSSと同じ乗り方が必要

だが後ろ乗りでフルバンクしようとするとフロントの接地感が薄くなりフロントにアンダーが出る(外側に逃げていく)。ある程度までのペースは後ろ乗りでもいけるが、中身はSSなのでフルバンクでコンパクトに曲がるにはフロントにしっかり荷重する必要がある。ここが勘違いしやすいところで、マシンをわかるまでは「ペースを上げると曲がらない?」と思いやすいところである。

SSと同様、シート後ろ側に座りつつ半ケツ座りになるまで内側にずらし、イン側グリップにヘルメットを当てるくらいに上体を内側へ沈ませて前輪に体重を掛けることが重要。猫背で腰から内側へ上体をひねり、それによって外側の太ももでタンクを抑え込む。内側のハンドルを真横から持つ形(アイーンしてる形)となる。こうすると後ろ乗りで感じていたフロントの反応の遅さ、頑固さ、接地感の薄さが一気に解決され、ストレスなく小回りすることができる。

これは↓のスズキ公式動画でも一目瞭然。

ここからはサーキットでSSと同じ乗り方をする場合と、山道で後ろ乗りする場合で分けて考える。

サーキットでの戦闘力は想像以上に高い

一時期所有していたGSX-R1000L1に比べると明らかに重く、腰高感があり高めのバーハンなので本来サーキットを走るには不利な要素があるはずだが、実際はかなり走る。

まずブレーキングは車重があるためか、SSほど簡単に止まる感じはない。しかしブレーキの効力は効きすぎない丁度いいもので、人差し指1本でフルブレーキまででき、リリースする時もカッチリしすぎていないのでジワっと戻すことができる。よほどのブレーキマニアでない限りは不満が出ない。

ただしフルブレーキングするには少しスプリングレートが低いのか、着座位置を後ろにずらしてタンデムベルトのところあたりに座らないとブレーキできない。特にフロントのプリロードを下げると露骨にブレーキが悪くなるので注意。

ターンインにつれてシート内側前部へ滑らせていき、腰を落として上体を内側に入れると本当にコンパクトに曲がる。バーハンでこの曲がり方は少々不思議で、ネイキッドのようにハンドルにぶら下がる感じとなる。バーハンの作りが良いので乗りにくさを感じる部分はほとんどなく、逆に外乱でフロントが振られても押さえが効いて余裕がある。

ただしセパハンで慣れている人には少々やりにくいかもしれない。ハンドルに惑わされず、しっかり腰を落としていくことが重要。タイトな切り返しでは前輪荷重が抜けやすかったり上体が遅れるなど、少々やりずらさはある。

前輪にしっかり荷重が掛かっていれば立ち上がりも非常にスムーズで、それほどフロントアップする気配もなく強く開けていける。リアサスのバネレートが高く突っ張るので(SSよりは低い)、トラコンを1に設定してもそうそう光ることなくしっかり後輪が踏ん張る。リアから曲がるとか流れながら立ち上がるとかはなく、綺麗に立ち上がる。

エンジン特性は中低回転域重視だがそれでも150馬力もあり、トルクの谷間がないので高回転まで安心して回すことができ、また1つ上のギアで走ることもできるトルクがあり、まさに理想的なエンジンといえる。

ターンインでのブレーキングは、車重と低めのフォークスプリングレートとポジションの問題もあってSSよりやや早めに、ハードにしすぎないように。バーハンドルは目線が高いので突っ込むとかなり怖い。

4気筒スポーツバイクとして最高の出来で、完璧なハンドリングマシン

SSとどっちが速いと言ったらSSだが、これだけ遊び心がある車体で日常域でも楽しめ、それでサーキットもSSくらい頑張れる本当に優秀なマシン。街乗り・峠・サーキット全て走りたい欲張りな人に最高のマシン。

ハンドルが高いため車と一緒に走るのも楽だし、街中を飛ばす時も高いハンドルと怒涛の低中速域トルクで楽しいし、山でも意外なほど鋭く曲がりトルクがあるので高めのギアでも走れ、サーキットでもSSと同じように走れる。

ではスポーティーすぎてスポーツ走行に興味ない人には向いてないのかというと、その一面はあると思う。スポーツしないならZ900RSのような街乗りを重視しているバイクのほうがマッチする。カタナもGSX-S1000も運動性能第一で作られてるし、走り込んでこそマシンの楽しさがわかる。

それでもカタナはアップライトなポジションとトルクがあるのに吹け上がりも良いという最高のエンジンによって、街乗りとツーリングだけの人でも十分に楽しめる特性を持つ。ちょっと大きめにスロットルを開けるだけで楽しめ、はっきり言ってここまで加速が楽しかったバイクは他にZX-12RとDR-Z400SMだけだった。

スポーツ走行好きはカウル付きのバイクを好む傾向があるが、本当に「楽しく」走りたいならこのカタナを強くオススメする。

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