客観的に見たZX-10R C型インプレ(後編)
前編ではC型10Rの過激すぎる特性について書きました。後編ではパワーについてです。
※2018年10月18日 訂正とお詫び
この記事では国内でほぼ全てに当たるマレーシア仕様のC型は、フルパワー仕様より馬力が抑えられているという話ですが、ミスターCに聞いた話によるとC型はマレーシア仕様がフルパワーとのことです。
具体的には、シートカウルを開けて見えるコネクタを外すだけでレブリミットが解除されてフルパワーとなるそうです。なので以下は特に読む必要はありませんが、既に公開したものなので削除しないでおきます。
前の記事では散々に言われたわね…。
最強を目指したマシンに対して日常用途がどうとか…
まったく興ざめもいいところだわ…。
お、一般人を無視して不評を買いまくったC型10Rじゃないか。
なによ、新型エンジンまで開発しながら
一代限りで終わったネイキッドじゃない
言ってくれるな。
それではそんなキミにいい話をしてあげよう。
いい、聞きたくない。
スポーツ車ではよく問題になる、仕様地って知ってるか?
(青ざめるC型10R)
大人の事情で、同じ年式のモデルでもスペックや特性が違ったりする。
日本・アメリカ・ヨーロッパで規制が違うから仕方ないことなんだが。
(クラッチを握り、ギアを1速にガッチャン!と入れるC型10R)
(キルスイッチでエンジンを切ってあげるGSX1400)
(全力で睨みつけるC型10R)
でな、各バイクの年式によってそれぞれ違うから
一概にはどうとは言えないんだが、
C型10Rで国内に入っているのはほとんどマレーシア仕様なんだ。
(VT250 スパーダがログインしました。)
どうもこんにちわ。
い、嫌なタイミングで…。
何の話をしていたんですか?
それはもちろん、C型はサーキット最速のためだけに設計された
最高にストイックなバイクということについてよ。
そう、それで国内のほとんどとなるマレーシア仕様のC型は
規制に通るように高回転域のパワーが減らされていてな。
………。
………。
だから一般的に言われている「クラス最軽量・最大パワー」の内、
後者はウソになってしまうわけなんだが。
え、でもカタログスペックでは確かに一番良かったはずだし、
海外での試乗対決でもいい結果なんですよね?
それは欧州のフルパワー仕様の話だな。
C型は高回転域のパワーがあってクラス最強のエンジンとなっているが、
マレーシア仕様ではその一番大事な部分が削られている。
え、それでも凄いパワーあるし軽いのは間違いないから
全然いいんじゃないですか?
(あれ、コイツ意外にいいヤツ?)
リッターSSの中で一番軽いのは事実だし、
ピークパワーは落ちようと十分すぎるパワーを持っている。
しかしC型で一番騒がれたのはそのパワーウェイトレシオ。
(コイツマジなんなの?)
最大馬力が下がれば当然パワーウェイトレシオも悪くなる。
他のSSより軽量ハイパワーというのもフルパワー仕様での話だ。
じゃあどのくらいフルパワーの欧州仕様と
マレーシア仕様で違いがあるの?
手元にC型での比較はないからわからないが、
参考までにD型では13馬力、E型では08年からの新規制のせいか
なんと20馬力もフルパワー仕様より低い!
え!? 20馬力って言ったら僕の最大馬力の半分ですよ!
そんなに差があるんですか!?
(C型10Rへ目線を移す)
(明後日のほうを向いている)
あくまで推測だが、C型では10〜13馬力低いと考えていいだろうな。
するとパワーウェイトレシオは同年代のYZF-R1とはほぼ変わらず、
GSX-R1000にはむしろ負けてしまう結果となる。
乗りやすく速いGSX-R1000にスペックでも負けてるんですか!?
10Rが乗りづらいのはスペックが高すぎるからと聞いていたのに…。
(スペック「でも」って何よ。
今度直線でウィリーしながらぶち抜いてやろうかしら…。)
手元の資料による比較だし個体差もあるが、間違ってないと思う。
まあC型の乗りにくさはスペックもあるが、ユニークなフレーム、高すぎる剛性、短いホイールベースなどやりすぎたことだろうな。
加えて、僕みたいに熟成されたVTシリーズというわけでもないし
荒削りな初期型というのもありそうですね。
(だからホンダと一緒にするなとあれほど…。)
上手い人が乗れば首都高や大きなサーキットだけでなく、
ミニサーキットでさえ立派なタイムを残している事実もある。
まるっきりダメなバイクというわけでは当然ない。
マレーシア仕様をフルパワーにはできないんですか?
あるかもしれないが聞いたことはない。簡単ではないだろう。
友人のいくつか改造を施されたC型は測ったら後軸165ps出ていたが、
当然ストックではないからフェアな比較ではない。
165馬力!? 普通の人じゃ扱えないパワーですね!
近年のSSはさらに強力なエンジンだが、車体の進化がある。
2000年台のSSはパワーが増す中、それを伝える車体がついていっていない。正直、一般人が気にする必要は全くない問題だろう。
そ、そう。あんたら一般人じゃ大して違いなんてわからないし
軽くて過激な車体なのは変わらないわ。
だが乗りやすさを捨てたわりに、結果はそれほどでもないよな。
これまでなら「軽くてパワーがありすぎて限界が高いから」という
言い訳できたが、こうなるとただ車体が悪いからということになる。
え、それってどこにいいところがあるんですか?
カワサキってところよ!
まあ敢えて選んで乗ってるマゾと主張できるところだろうな。
不利なシチュエーションでは「こういうところ用じゃないから…」
と誤魔化せるし…。
C型乗りにそんな腑抜けいないわよ!
独特の存在感とか乗り心地を気に入ってるからに決まってるでしょ!
まあさっきのは冗談で、確かに高い荷重をかけた時に
普段とは一変する鋭敏な挙動は魅力だ。
なんといっても600ccに近いコンパクトさだからな。
どこでも乗りやすいんじゃ面白くないでしょ。
アタシの本気を見たかったら相応な場に持ち込みなさい。
まあともかく、なぜC型10Rが失敗だったのかよくわかるな。
言っちゃ悪いが、近年の国産SSでここまで失敗しているものは他にないぞ。
え、スズキにあるじゃないですか。
ほら2気筒のあの…
ちょっと! TLと一緒にしないでくれる!?
あんな欠陥車と違って、C型はちょっとバランスが悪いだけよ!
五十歩百歩だろ。
それにTLはSVシリーズになって欧州ではスズキを代表するバイクだぞ。
スズキの2気筒を成功させるための布石だったんだよ。
知らないわよ! 日本じゃTLもSVも売れてないの!
ということで、C型って実は…という話を普通に淡々と書くのは気乗りしなかったので、あえて会話形式にしました。少しだけオブラートに包めた可能性があります。
みなさんおわかりだと思いますが、バイクはカタログスペックなんてそれほど気にする必要はなくて、乗って気にいるかどうかです。
じゃあなんでこんな記事にしたのかというと、客観的にC型を評価する以上、巷で言われるパワーウェイトレシオの件に触れざるを得なかったので…。いずれにせよ、一般人にはパワーありすぎなので気にする必要はないですし、C型には軽いという最大の武器があります。
車体は硬いしバランスが悪くても、サスセッティングやちょっとした改造をすることでバランスが変化して乗りやすくなったりするのがC型の楽しさの1つでもあります。罪深いバイクなのは違いないでしょうね。
ちなみに車重や馬力の資料は信頼できる出自のものですが、私が計測したものではないので具体的な数値は載せられません。ご了承ください。