バイク達の思い出 第8回「XV1900CU RSV Mille GPZ1100」
このシリーズでは管理人が今までに乗ってきたバイク達を振り返っていく。
36. XV1900CU
ヤマハの試乗会があり、もともとアメリカンに興味があり乗ってみた。
アメリカンに乗ったことがない人はそのカタログスペックの重量から取り回しが緊張すると想像しがちだが、低重心でシート高が低いので乗り降りも低速走行も実は大型バイクの中ではやりやすいほうだ。
極低速域ではふらつきがなく安定していて、ハンドリングも扱いやすい軽さで倒れる気がしない。トルクの出方も安定していて、エンストしそうな気配もない。女性でも乗れると個人的には思う。
走り出してみるとこれまで経験したことのない気持ちよさである。大排気量2気筒と言えばMT-01の件がありもっと粗雑だと思っていたが、これはもう極上といっていい。エンジンは扱いやすくトルクがあり最高だ。ぶっ飛ぶパワーはないが扱いづらさは全くない。40キロでずっと楽しく走っていられると言えばどれほどかわかるだろうか。
また車体安定性やハンドリングも実にフレンドリーだ。ハンドルが切れ込んで腕がきつそうとか想像していたが、切れ込みは少なめで車体全体が思ったよりバンクする感じ。だがあくまでどこまでも自然な挙動で、怖さは全くない。そして急かされる感も全くない。
マイペースに「ゆったり曲がれればいいや」と思える。ある意味、究極的に自分の世界へ入ってしまうバイクである。
コーナリングが全くできないわけではなくて、少しオーバースピードで突っ込んでも破綻せずスムーズなコーナリング特性を示す。だがやはり重量があるのでアンダーステアが出やすく無理は禁物。
アメリカンと言えば、スポーツ走行に全く興味がない街乗り・ツーリングオンリーなオジサンが乗るバイクだと正直食わず嫌いしてたので、自分で乗ってみてこんなに素晴らしいジャンルだったんだと驚嘆した出来事だった。
多分、ヤマハのXV1900CUは設計が新しい相当洗練されたアメリカンで、もっとラフなものもあるとは思う。もっとハーレーみたいなドコドコとしたものが気持ちいい可能性もある。が、XV1900CUの気持ちよさは超高次元にある。レンタルバイクで置いてあれば定期的に借りて乗ってもいいくらいだコレは。
37. RSV Mille
弟が一時的に増車していたアプリリアの超カッコイイ1000SS。ビッグツインである。私も弟もRS50に乗っていたので憧れのあるバイクだった。
あくまで個人的にだが、アプリリアのデザインが大好きでこれぞSSと手放しで喜んでしまう。現代の小さく直線的なSSのデザインと違い、この頃は流線型のものが多かった。RSV Milleは結構大きいバイクであり、でかくて流線型というのは美しいの一言である。写真写りはイマイチかもしれないが、実車の迫力と美しさは最高だ。
ハンドルは結構遠く、そしてそのハンドルまで上体をしっかり前傾させないと車体のリズムに身体が遅れる。だが初期旋回の良さはかなりのものがあり、タイヤはちょっと硬くなってたS20だったが確実に私のC型10Rより速いと思った。ただすぐにはVツインに慣れなくて使いこなせなかった。
街乗りではエンジンのフィーリングはまずまずといったところで、2気筒だから特に気持ちいいこともなかった。ただわりと低回転でノッキングしやすかったので、一般車と走る時は4速くらいを使うことが多かった。
一番の問題はキツイポジションで、10Rで慣れている私でもちょっとしんどいと思った。RSV Milleでの街乗りにはいくばくかの耐えが付きまとう。
実に楽しみなバイクだったのだが、不運にも街中で4輪にぶつけられ修理されることなく去ってしまった。
38. GPZ1100
より詳しいインプレは試乗レポートのGPZ1100のページに書いてある。
弟がZRX1100を手放して買ったバイク。ちょうど1つ前のモデルを買ったようなものである。「退化するようなものだから」と私は止めたが、こういった少しゆったりしたバイクが欲しくてネット上でも評価が高いといい買い替えた。
ZRX1100が高回転型エンジン搭載のスポーツネイキッドに対し、GPZ1100はメガスポーツと高速ツアラーの中間点のような挙動である。
先にZRX1100の挙動を簡単にまとめると、とにかく元気の良い軽快な挙動のコーナリング特性で、エンジンは高回転型である。
対してGPZ1100は、ホイールベースが長くツアラーのようにまったり曲がるバイクで、エンジンはフラットな特性である。
コーナリングはコツがあり、普通のバイクのようにブレーキ残しで曲がろうとすると長いホイールベースから大回りのコーナリングとなってしまう。だがライテクのページに書いたアクセルを開けながら曲がる走法だと高い安定性のままそれなりに曲がる。
車体全体の安定感が素晴らしく寝かし込みも安心して行えるのだが、コーナリングの限界性能はそれほど高くない。それでも下手なSSには十分に勝てる性能を持ち、そして何度も書くが安定性が高くライダーが安心して攻められる。
だが前後サスに調整機能が全くないのが問題で、標準的な日本人が乗るにはなかなかいい動きをするのだが、唯一フロントフォークが物凄く柔らかい。だからブレーキングは意識して早めに緩めにやらないと、フロントが入りすぎて怖い思いをすることになる。
だからブレーキングは意識して早めに、そこそこの強さに抑えて掛け続け、速度を落としすぎないように進入しアクセルを開けながらリアを外側に流す意識でターンインする。ホイールベースが長く安定性が高すぎるこの車体ではこの走り方が絶対必要になる。突っ込んでフロントで曲げるのは不可能だ。
街乗りではエンジンが低中速域を重視したものであることもあり、かなり快適に乗れる。弟のGPZ1100はアップハンドルになっているので、まるで立派なビッグネイキッドに乗っている気分で実に気持ちがいい。
コーナリングはビッグネイキッドよりもハンドルの切れが弱くリアを中心とした寝かし込みで曲がる感じなので、実にいいとこどりな街乗り・ツーリングバイクである。古いバイクだが、こんなに的確に良い特性を実現した優秀なバイクが売れなかったのは実に惜しく感じる。走りは現代のバイクに負けてないぞ。
気になるのがステップ位置が低い点で、街乗りはまあいいが走る時には低すぎて若干ステップ荷重しにくい。だからハングオフしている時に妙な大柄感が出てしまう。太ももは丁度シート前端の上に上がっているところに食い込むので、ホールド性はすこぶる良好。
それとコストダウンのため仕方ないのかもしれないが、サスに調整機能が全くないのはさすがに不満。日本人が乗るちょうどいい固さにほぼなっているが、フロントのプリロードか圧側だけはもう少し硬くしたい。
GPZ1100はGPZ900Rなどで蓄積したノウハウを惜しみなく投入したというのは恐らく本当で、完成度はかなり高いと私も思うが一度乗ってみないと良さが伝わらず、やはり地味さがあるので売れなかったのだろう。カワサキのバイク造りに対する真摯な姿勢がよく伝わる名車である。
ここからはオーナーであるウチの弟からのコメント。
「古くて安っぽくてマイナーなバイクだけど、熟成されたNinja系のエンジンは、回している時のフィーリングは最高に気持ちいいし、数値以上にパワフルだよ。しかも、ZZRやZRXが5速なのに対して、こっちは始めっから「6速」が載っているから、高速道路も楽々で巡行出来るよ。そのせいか、エンジンだけがGPZ900Rとかにドナーされちゃう悲しいバイクなんだけどね。」